わたしが小学生5年生の夏休みに体験した水難事故にまつわる恐怖体験をお話させてください。
当時わたしが暮らしていた町には大きい池があって、その隣には公園がありました。(今はもう公園はないそうです。)
友達と公園で遊んでいると、同じ小学校の男の子数人が池で泳いているのが見えました。(池は遊泳禁止、釣り禁止でした。)
しばらくすると、男の子たちが大きな声で騒ぎ始めて、大人数人が池のほとりに集まってきているのが見えました。
何があったんだろうと思って、わたしたちも池のほとりまで行くと、泳いでいた男子一人が池で溺れたと騒ぎになっていました。
助けを呼んだ男の子たちが指さしている方向を見てみると、ほとりから30mくらいだったと思います、その辺りで溺れた男の子の腕が水面からでたり沈んだりしていました。
知らないおじさんが男の子を助けようと池に飛び込んで、溺れている男の子のところまで行くと、「ダメだ!引っ張りあげられない!救助よんで!」と叫びました。
おじさんは何度か水の中に潜っていましたが、そのたびに「ムリだ!早くしないと!」「早くして!」と言って、辺りは緊迫した空気になりました。
男の子たちは泣いているし、集まったおじさんやおばさんたちは「頑張れ!頑張れ!」と声をかけていました。
間もなくして、救急車とパトカーが到着しました。しばらくしてから男の子は引き上げられて病院に搬送されました。(男の子は意識不明の状態が何日か続いて亡くなりました。)
男の子は池の水草?か何かが足にからまって、溺れたんだそうです。
わたし、見たんです。
男の子が救助されて搬送された後に、溺れた辺りの水面から人の腕が3本でていたんです。
紫に変色したように見える腕と白い腕が見えました。
わたしはまぼろしでも見ているのかなと誰にも話しませんでした。でも後日、遊んでいた友達にそのことを話すと、「わたしも見た」と…3本の腕はまぼろしじゃなかったんです。
友達は腕だけじゃなくてまっ黒い目をした女の人の顔も見たそうです。
顔の鼻下から上が水面からでていて髪の毛はセンターわけの黒髪で顔は白粉でもつけているようにまっ白だったと話していました。
2学期が始まって、そのことを学校の先生に話しましたが、「動揺して何かを見間違えただけだよ」「怖がらなくても大丈夫だよ」と言われて信じてもらえませんでした。
友達と相談して、わたしたちが見たことは内緒にしておこうねと胸にしまっておくことにしました。
同じ学校の子が亡くなる水難事故が起きて、変なものを見てしまったこともあって、池には近づきたくなかったのであれから公園で遊ぶことはなくなりました。
話はまだ続きます。
水難事故から2年後の中学生の時の話です。
わたしは中学生になってから週に3日ほど塾に通っていました。夕方6時から夜9時まで授業がありました。
家から塾まで一番の近道は水難事故があった池の横にある道を通らなければならなかったのですが、池に近づくのがイヤだったので、少し遠回りして塾に通っていました。
ある日、塾が終わってから塾の友達と30分くらいおしゃべりして、いつもより帰りが遅くなったことがありました。
時間が遅くなっちゃったので、今日だけは近道して帰ろうと決心して、池の横の道を通りました。
夜になると人通りがほとんどなくて、車もあまり走らない道です。
急ぎ足で池の横を通り過ぎようとしていた時、池の方から太鼓のようなボンボンボンボン…ていう音が聞こえてきました。
池の周りには街路灯が何本が立っていましたが、大きな池なのでほとんどまっ暗で何も見えませんでした。
太鼓のみたいな音は少しづつ大きくなって近づいてきて、恐怖で立ちすくんでいると太鼓の音がパタと止みました。
そして、池の方から女の人のうめき声のような民謡の唄声のような音が聞こえてきて、バシャバシャと水面を叩くような音も聞こえてきました。
「ここから逃げないと!」と思って震える足に力を入れて、急いで走ってその場を離れました。
その翌日のことです。
わたしが通った道で交通事故がありました。車が電柱にぶつかって、車の前半分がつぶれるくらい激しい事故だったみたいです。
後で知ったのですが、その道では事故が多発していて、死亡事故もあったようです。
それから1か月ほど後に、半年に1回行われる池の清掃がありました。
清掃員が小さいボートに乗って池に浮かんでいるゴミを集める清掃です。
その最中に、ボートが転覆して清掃員さんが溺れる事故が発生しました。
清掃員さんは無事でしたが、ボートが転覆したのは「池から手がたくさんでてきて、ボートの縁をつかんで揺らしたから」と言っていたと聞きました。
池で水難事故が起きたり、池の横の道で事故が多発してることもあって町内会で話し合い、隣町にあるお寺の住職にお祓いをしてもらうことになりました。
お祓いは10月の日曜日の午前中に行われることになり、住職からのお願いで、池の近くに住む住民にも参加してもらって一緒に手をあわせて欲しいということでした。
わたしは池の近くに住んでいたわけじゃなかったんですが、怖い体験をしていたのでお祓いをしてもらえるなら参加してみようと思って、手と顔を見た友達も誘って一緒に10時前に池に行きました。
池に着くと20人くらいの人が集まっていて、住職の到着を待っていました。
町内会の人が車で住職を迎えにいって、10時くらいに池に到着する予定でした。
しかし、10時15分ころになっても住職はまだ到着しませんでした。
そして、10時半くらいでしょうか。町内会の人の車がやってきました。しかし車には住職は乗っていませんでした。
話を聞くと、住職を迎えにいってこちらの池に向かっている最中に、住職が突然に「引き返して欲しい」と言いだして、訳を聞くと「池にはわたしの手に負えない恐ろしい霊がいる」「行けばわたしは死ぬ」と言っていたそうです。
住職は虚ろな目で顔をまっ赤にして呼吸を乱していたので、急いでお寺に引き返して送り届けてきたと言っていました。
そして、集まった人たちでどうしようかと話し合っている最中のことです。
池の方からわたしが聞いた女の人のうめき声のような唄声が聞こえてきて、あの場にいた人たちみんなが聞きました。
みんな顔をこわばらせて、恐怖していたように見えました。
その後に緊急で町内会議がおこなわれて、お祓いしてくれるお寺か神社を探すことになりました。
その夜にお祓いができなかった住職から町内会長の家に電話があって、お祓いができなかった謝罪と代わりにお祓いをやってくれる方を紹介するという話がありました。
次の日曜に京都にあるお寺の住職と4人の付きそい人がお祓いにきてくれました。
住職は70歳くらいのおじいさんで痩せてて温和な感じがする人でした。(どこか頼りなさそうな感じもしました。)
でもお祓いがはじまると、住職の顔が鬼のような形相に変わり、付きそいの人たちとお経を池に向かって唱え始めました。
わたしと友達、集まった人たちは手を合わせてお祓いの様子を見守っていました。
お祓いがはじまってから10分も経っていなかったと思います。
付きそいの一番若い人がヨロヨロと歩きだして、公園の方へと進んでいきました。
それに気がついたほかの付きそいの人が制止しようとしたら、歩いていた若い付きそいの人が何か大声叫びながら殴りかかりました。
あわてて他の付きそいの人たちも止めに入って、若い人を地面に押さえつけて何とかおとなしくさせたんですが、若い人の左手を見ると指が全部手の甲の方にぐにゃりと折れ曲がってました。
殴って折れたような感じではありませんでした。強い力でひねりつぶされたように折れ曲がっていたんです。
若い人が暴れている間も住職は鬼のような形相でお経を唱え続けていました。
それから30分くらいしてお経をやめて、「終わりました。あとはこちらですべて引き取ります」と言って、付きそいの人たちと町内会で用意していたホテルへと移動しました。
暴れていた若い人は気を失ったようで抱きかかえられてタクシーに乗せられてました。
わたしたちは無事にお祓いが終わったと思って、その場で解散となりました。
池の方を見ても何も見えませんでした。そして気持ち悪い唄声も聞こえませんでした。
「もう安心だね」と友達と話ながら家に帰りました。
お祓いが終わって家に帰って少し疲れていたので夕食の時間まで寝ることにしました。
あれはたしか夕方4時くらいでした。
外から消防車の音が聞こえてきて、わたしは目を覚ましました。
窓をあけて外を見たら火事になっているお宅があって煙が見えました。家事になっていたお宅は池の横の道からすぐ近くに建っていました。
火はすぐに消されたみたいで、家の台所が燃えただけですんでケガ人はいませんでした。
住人のお話では、火事になる直前に玄関の呼び鈴が鳴ってドアを開けると、笠をかぶった修行僧のような男の人が立っていて、御用をたずねると「水をわけてください」と言ったそうです。
そして水を注ぐために台所へいったら台所が燃えていて、あわてて消防車を呼んで外に逃げたら、男の人は消えていなくなっていたそうです。
このお話を聞いて、わたしは嫌な予感がしました。
お祓いはうまくいかなかったんじゃないかと…
その翌日のことです。
町内会長のところに電話がありました。お祓いの最中で暴れていた男の人がいなくなったと。
ホテルに泊まって、翌朝に男の人がいなくなっていたことに気づいたみたいです。
当時は携帯電話やパソコンはない時代です。男の人に連絡はとれないので、町内会やお祓いに参加した人たちで捜索が始まりました。わたしは学校があったので参加していません。
ホテルの辺り一帯や駅の周辺を捜索しても見つからず、警察に捜索をお願いしたほうがいいという意見もあったそうですが、大事にはしたくないということだったので、町の人たちで捜索を続けることになりました。
その翌日に、お祓いをしてくれた住職は京都に戻ることになって、付きそいの3人のうち2人が現地に残って捜索を続けることになりました。
捜索の範囲を広げても男の人の行方はわからなかったそうです。
そして、お祓いをやってもらった池や周りも捜索してみようということになりました。
池には清掃用具などを入れてあった小さい倉庫がありました。
その倉庫の手前に、行方不明の男の人が履いていた草履が並べておいてあったそうです。
倉庫には鍵がかかっていて開けることはできないはずでしたが、一応中を見てみようということになって、管理人に鍵を持ってきてもらって扉を開けたら行方不明の男の人が中にいたそうです。
丈夫な南京錠で鍵がかけられてましたし倉庫には窓はないので、どうやって男の人が中に入ったのか誰にもわかりませんでした。
男の人は上半身裸で、自分で身体をかきむしったみたいで傷だらけだったそうです。
意識はあったみたいですが病院にいって治療をしてもらいました。
そして、お祓いのときに男の人の左手の指がぐにゃりと折れ曲がっていたのに、手は何もなかったように治っていたそうです。
でも男の人と意思疎通することは難しくなっていて、現地に残っていた付きそいの人たちに連れられて京都へと戻っていきました。
付きそいの人たちが帰ってから数日後のことです。
火事になったお宅の近所で住人が亡くなりました。死因は溺死でした。お風呂で溺死していたそうです。
お風呂の中には長いツタが沈んでいて遺体に絡みついていたという話でした。
池の周りで不吉なことが続いたので、お祓いをしてくれた住職に事の次第を伝えるために町内会長が電話をすると、住職は京都に戻った後に心臓発作をおこして入院をしていました。
軽度の心臓発作で命に別状はなかったみたいですが高齢なのでしばらく入院して様子をみることになったそうです。
池の周りでおきている不吉なことを付きそいの人に話すと「住職と相談します」と伝えられて、付きそいの人からの連絡を待つことになりました。
そして、一時行方不明になった男の人は京都に帰ってから正気に戻って、行方不明になった時の話を聞いても覚えていなくて記憶がないということでした。
電話をしてから数日後に町内会長に連絡がありました。
住職の話では、お祓いをして池に憑依していた霊を成仏させることはできたが、池の近くに呪詛のような術を使える人がいて、その人が別の霊を呼び寄せたり、池の周りに災いをおこしているのではないかという話でした。
そして、お祓いをしたときに集まった人たちのなかに、呪詛を使っている人物もいたはずということでした。
付きそいの男の人がおかしくなったのは呪詛をかけられたせいだったみたいです。
お祓いのときに集まったのは20人くらいで、そのうちのほとんど顔をあわせたら挨拶してくれる顔なじみでしたから、あの中に呪詛を使っている人がいるなんて信じられませんでした。(みんな普通のいい人たちでした。思い当たる人はひとりもいません。)
そして、住職の話では呪詛を使っている人物をさがしだして、止めさせないと災いは続くことになるだろうという話でした。
それから町内会議があって、住職の話が町内会員に伝えられたんですけど、わたし思ったんです。
町内会員の中に呪詛を使っている人物がいて、会議に参加していたら何かやるんじゃないかって…。
そして町内会議で決まったことは、毎日池の見回りを交代でおこなって事故を防ぐことと年に1回お祓いをしてもらうことでした。
わたしは大学進学で家を離れたんですが、それまでに池で水難事故はなかったけど池の横の道では事故が続いて、池の近くに住む人が亡くなったり行方不明になったりして恐かったです。
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